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tokyo
中村征夫写真展「全・東京湾」
2011年8月4日(木)~2012年4月1日(日)

大都会の海「東京湾」は、今でも死の海というイメージが強い。1977年春、その実態が知りたくて、私は悪臭放つ隅田川の河口にあたるお台場の海に潜ってみた。初めて覗いたお台場の海中は、これまで見たことも経験したこともない、まるで死の淵に臨むような恐るべき体験であった。だが驚くことに、そこには多くの江戸前生物の命が満ち溢れているのだった。
手足を着くと、ズブズブと腰まで埋もれてしまうほどの厚いヘドロに覆われた海底。だが、そんな劣悪な環境下でも、カニやエビ、ハゼなどが気ままに暮らしていることに驚かされた。
そして、生きものたちの何食わぬ暮らしぶりを見て、私は強く心を揺さぶられた。江戸前の生きものたちは、ここで生まれ、ここで死を迎える。海の生きものでありながら、本来の美しい海に抱かれることもなく、命を終えることの理不尽さ。
ここまで海を汚しながら、なお、生きものたちに厳しい現実を突き付けている私たち人間。それでも懸命に生きようとする東京湾の生きものたちに、深い哀れみと畏敬の念さえ抱くようになっていくのだった。
中村征夫

中村征夫(なかむら・いくお)

水中写真家 1945年秋田県生まれ。20歳のときに潜水と水中写真を始める。現在、海を専門とする撮影プロダクション(株)スコール.代表。国内外の海を精力的に取材し、数多くの話題作を発表。ライフワークの東京湾をはじめ、水俣湾、諫早湾など、人と海との関係や、「命」を基本姿勢に取り組む報道写真家でもある。講演会やテレビ、ラジオなど様々なメディアをとおして、海の魅力と環境問題を伝え続けている。第13回木村伊兵衛写真賞、第9回文化庁芸術作品賞、2007年度日本写真協会年度賞、第26回土門拳賞などを受賞。

中村征夫公式ページ http://www.squall.co.jp/

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